偉くなるということ

 いまコンサルティングとしてご一緒させてもらっているA氏は、とても腰が低く謙虚な人格者だ。一方で、会社を良くしていきたいという向上心も、自身の能力も高いことからどんどん職位が上がっている。ただ、この職位が上がれば上がるほど、本来欲しがっている現場の情報が集まりにくくなっているようだ。

 きっと、偉くなるということはこういう側面があると思う。所掌する範囲が増える分、いままで見れていたディテールで物事が見れなくなるのだ。また、部下からの気遣いや忖度をより多く受けるため、生々しい情報が入りにくい。決して悪いことではないが、ではどうすればいいのか?

 多分、良い情報のみを加工してあげてくる部下や失敗を人のせいにする部下など、一見心地の良い報告をしてくるものだけでなく、自己保身せずに正直にいろいろな意見を言ってくれる人間を周りに複数おくことだと思う。
 必ずしも直属の部下である必要はなく、監査役であったり、他部署の人間であったり、外部のコンサルタントだっていいと思う。それらの人たちの言葉に真摯に耳を傾けて、自分の考えや認識の確からしさを常に検証出来る仕組みを維持しておくことだと思う。

 私は、A氏に対して、忖度をせず自己保身を捨てて、誠実に意見を言い続けるのが役割だ。私のことを面倒に思いA氏が距離を置いてくるまでは、この存在で居続けるつもりだ。背負っている責任はかなり違うが、想いを一緒にしていれば、きっと言葉は届くと信じている。