お客様がコンサルを入れよう、と思うきっかけは様々あるが、割と多いのは、現行システムに不満がありシステムの刷新を考えたい、というものだ。
昨今、世の中のあらゆる業務は、既にシステム化がされていて、それなりに長く使われている。システムは、構築して安定してくると、動いて当たり前、なものとなる。そうなると、現行ベンダの工夫や献身的な活動により、それなりにシステムが動いていても、いつの間にかお客様側には不満が溜まってくるものだ。
例えば、欲しい機能が実装されてなければ不満、ユーザビリティの悪さを感じたら不満、例年と同じ運用保守費用を請求されると不満、運用保守要員の対応が思い通りでないと不満、稀に障害でも起こしようものなら大不満、などなど。減点材料がたくさんある割にプラス材料は極めて少ない。
私もかつて、古いアーキテクチャのシステムを10年以上保守していたことがある。お客様のビジネス価値や満足度を保ちつつ、現行システムを維持するのがどれほど大変なことかは、身を持って良く知っている。
本当に、現行システムも現行ベンダもダメダメで、システムを刷新するしかお客様のビジネス価値を創造する手段が無い場合もあるが、お客様と現行ベンダの認識の相違が多分にある場合、全面刷新が唯一無二の答えではないこともある。
なので、私はシステム刷新の検討コンサルを受ける際には、「本当にそのシステムを刷新すべきか」の検討からやらせてもらうようにしている。その際、以下のようなアプローチで現状を評価する。
・現行システムで、必要な業務を支えることが出来ているか
👉システムの正確性に問題はないか(正確性を担保するために様々な外部チェックをしていないか)
👉業務に必要な最低限の機能を具備しているか(不足機能の多くをExcel等のツールでカバーしていたり、目や手を使って代替していることが多く残っていないか)
・現行ベンダと正しい信頼関係を築けているか
👉現行ベンダは、中長期の目線で、体制やスキルを維持するための方策を講じてくれているか
👉現行ベンダが、お願いしたことをあまり聞いてくれない、とか、何も新しい提案をしない等、野良ベンダ化をしていないか
現行システムやそれを支える現行ベンダが、さほど上記のような問題のある状況にない場合、私はお客様に対して、システム刷新はあくまでも手段であるとともに、全面刷新することの大変さやリスクをしっかり伝えるようにしている。また、現行システムが当たり前のように動いていることに対して、再評価することを促すようにしている。
その結果、システムを全面刷新するのではなく、現行システムをスリム化して残しつつ、追加したい機能だけ別サービスを活用する、などの選択肢も考えられるからだ。大事なことはお客様に不要なリスクを抱えさせることなく、ビジネス価値を最大化する方策を創出することだ。
一方で、もはや現行システムを維持することは、お客様にとってメリットが少なくリスクが増大するだけ、と判断した場合、粛々清々と現行システムを全面刷新をることを提案する。課題を先送りして良いことは一つもない。
いろいろ書いてきたが言いたいことは、せっかく作ったシステムは、お客様と現行ベンダーの双方で、出来るだけ長くビジネス価値を創出し続けるように、大事に維持して欲しいと願う。
そのためには、お客様は、現行ベンダの作業内容や工夫をしっかり理解し、維持してくれていることへの敬意を持ち続けて頂きたい。現行ベンダは、常に緊張感とプロ意識を持って、現行システムの維持・向上を通してお客様のビジネスを中長期に渡って支える気概を忘れないで欲しい。
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