コンサルタントに求められる能力㉓:不安定さを受け入れる力

私が30代の頃、公共系のシステム開発部門に所属していた。当時、部門として新しい業務領域を模索しており、ちょうど調達機会が増え始めていた「システムコンサルティング」に取り組むことになった。その急先鋒に任命されたのが、私だった。

まずは社内でシステムコンサルティングをやっている別部門に半年ほど修行に出され、そのやり方を自部門に持ち帰って、公共団体向けのシステムコンサルティングを始めた。今思えば、半年で独り立ちというのは、なかなか無茶だったと思う(苦笑)。案の定、失敗は山ほどあったが、時代の流れにも助けられて、仕事自体はどんどん増えていった。

部門の方針は「SEを投入するから、とにかく案件を取れ」というものになり、気がつけば1年後には10人以上を抱えるコンサルティングを実施する組織のリーダーになっていた。この頃から、SE出身者をコンサルタントとして登用することになる。正確に数えたわけではないが、これまでに100人以上のSEの方と、一緒にコンサルティングをしてきたと思う。

コンサルティングには、やはり向き不向きがある。一定の素養があっても、「もう無理です。開発に戻りたいです」という人は必ず出てくる。理由はいろいろだが、わりと多いのが「業務が不安定なのがつらい」という声だ。

システム開発では、仕様書が提示され、それに対して提案を行い、実施計画を立てて、QCDを守りながらシステムを作っていく。いつまでに何を実施して何を作るのかが、作業を始める前からかなりはっきりしている。一方で、コンサルティングは違う。方向性やイメージは示されても、「じゃあ具体的にどうするか」は、そこから考えることになる。実施計画の段階で、最終的なアウトプットがはっきり見えていることのほうが少ない。

コンサルタントの仕事は、とにかく考えることだ。よく考えて、その考えをお客様と共有して、少しずつゴールに近づきながら成果物を作っていく。最初の段階でゴールがほぼ決まっているシステム開発とは、性質がまったく違う。

この「先が見えない感じ」が、人によってはかなりのストレスになるらしい。本人いわく、フワフワしたクッションの上をずっと歩かされているようで、とにかく落ち着かないのだという。コンサルタントには、こうした不安定な状況を、そこまで苦にしない資質が求められるのだ。

「どうすればお客様にとってより良い解決になるのか」「どうすればそれをお客様と共有できるのか」など、コンサルタントは、終わりが見えない中で、ひたすら考え続ける仕事だ。それは、フワフワしたクッションの上を、どこまで続くかわからないまま歩き続けるようなものかもしれない。

それをストレスと感じるか、面白いと感じるか、その差は大きい。私はというと、きっちりした計画を立ててQCDを守り切る仕事よりも、不安定な中で考える余地があるほうが、むしろ気持ちが落ち着く。このあたりは、たぶんコンサルタント向きなのだろう。