かつてベテランのシステムエンジニアの方を、コンサルタントとして登用して、一緒に仕事をしたことがある。この方は、多くのシステム開発経験があり、コミュニケーション能力も人柄も問題がない。少し教えればすぐにコンサルタントとして独り立ちするだろう、と思っていた。
ところが実際は、独り立ちするどころか、お客様を満足させるアドバイスや提案をほとんどすることが出来なかった。
なぜこの方が、期待通りの活躍が出来なかったのかを考えると、いくつか思い当たることがある。
・この方はずっと小さいソフトウェアハウスに所属し、早くから即戦力として現場に入っていた。
・参画する現場は、緊急性の高い現場が多く、目の前のタスクを終わらせることが最優先であった。
・システム開発に関する知識やスキルは、全てこれらの現場で学んできた。
・必要に迫られたことがないのでITに関連する資格は取得してこなかった。
この方は、一般的な大企業が行うような計画的な人材育成や研修を受けていない。そのため、この方の持つ知識や経験は、とても実践的ではあったのだが、一方で致命的な凸凹が出来てしまっていて、本来知っていなければいけないことが欠けていた。
また、コンサルタントは、お客様から何かしらのアドバイスを求められた時、自分自身の持つ「経験」「知識」「スキル」「コンピテンシー」などをフル活用して、そのお客様のコンディションに合った適切なアドバイスを迅速に提供する必要がある。
恐らくこの方にも、自身の経験や知識の中には適切なアドバイスに近しいものはあるのだが、それを整理している棚がないので、何を出せばいいのか分からなかったのだろう。
こうして考えると、ここは声を大きくして言いたい。
もしもこれからシステムコンサルタントを目指すのなら、自身の持つ経験や知識について、正しく体系化することに取り組んでほしい。これは、しっかりとした人材育成計画があるような企業に所属している場合でも、意識しないと身につかないものだ。
そのためには、例えば以下のようなことをしてみてはどうか。子供が自転車に乗れた瞬間のような明確な達成感はないが、気が付くと身についているものなので、気長にあきらめずに継続をしてみてほしい。
・日本経済新聞や日経コンピュータのような幅広い情報を扱うメディアに常に触れて、バランスの良い常識を収集し続けること。
・情報処理技術者試験やPMPのような知識体系がしっかりと整理出来る資格を取得をすること。情報処理技術者試験であれば、応用技術者試験以上の取得を目指して頂きたい。
・自身が現場で経験したことや修得した知識について、これらの資格取得で学んだ知識体系と対比させる習慣をつけること。これができるようになると、自身の経験や知識だけでなく、他者から聞いた話もコンサルティングに上手く活用出来るようになる。
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