コンサルタントに求められる能力㉑落としどころを創造する能力

 コンサルティングにはいろいろな種類がある。例えば、当社でもよくやっているアドバイザリー業務は、お客様の悩み事をお聞きして、自分の経験やスキルを踏まえたアドバイスをする業務だ。これは、どのような悩みが出てくるか、話を聞かないと分からないことが多いので、ある程度の準備は出来ても、出たとこ勝負の色が強い。

 一方で、業務やシステムなどの改善策を提案するようなコンサルティング業務は、一般的には以下のステップを踏みながら、計画的に進めることが多い。
①実施計画の策定
②現状調査
③課題の把握
④解決策の検討
⑤アクションプランの策定

 以前のコラムにも記載したことがあるが、この手のコンサルティングにおいて、「①実施計画の策定」はとても重要となってくる。
 実施計画を作る時には、事前にお客様から「なぜこのコンサルティングをやりたいのか」「どのように進めたいか」などのお話を聞くことから始まる。私は、ここにコンサルティング手順ばかりを書くのではなく、コンサルティングを進めると出てくるであろう「④解決策の検討」の結果を、仮説(=落としどころ)として創造して、薄らぼんやりと盛り込むようにしている。

 この落としどころをあまり考えずに、ベーシックなコンサルティング手順に則り、常に自然体でコンサルティングを進めてくるコンサルタントも見受けられる。なんとなく、お客様に寄り添って進めているようにも見えるが、一方でプロなのだから、「良かれと思う方向」に引っ張っぱれよ、と思う。このようなコンサルタントは、議論が発散しても、それを収束させる能力がないので、私に言われせれば到底プロの仕事とは言い難い。

 もちろん、コンサルティングを進めていくと、この落としどころの通りにはならないことも多々あるが、最近は大筋で外れることも少ない。だとすると、この落としどころの創造はけっこう重要で、ここに向かってコンサルティングのメインストリートを定めつつ、必要に応じて、横道に行ってみたり、道順を変えてみたりするマネジメントをすればいいのだ。間違いなくコンサルタントに求められるスキルだ。

 ただし、落としどころはあくまでも仮説で、あまりこだわり過ぎないことも重要だ。この落としどころは、コンサルティングを進めていくうちに、思い切り外れていることもあるし、お客様の考え方が整理されていくうちに、いままでの考え方と根底から変わることもある。
 創造した落としどころが、メインストリートの先には出てこないな、と確信したら、私は思い切って実施計画書まで戻って、コンサルティングの進め方を見直すようにする。このような柔軟性も極めて重要だ。

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