残念なシステムコンサルタント②自分のためのコンサルティングをしてしまうコンサルタント

私は金融系シンクタンクで、公共団体向けのコンサルティングを経験してきた。さらに現在も、公共団体側の管理職としてコンサルタントを利用する立場にある。
コンサルタントとして仕事をする側と、コンサルタントを使う側。両方の立場を経験していると、「これはちょっと残念だな」と思うシステムコンサルタントに出会うことがある。今回は、その中でも「自分のためのコンサルティングをしてしまうコンサルタント」について書いてみたい。

コンサルティングは「フロー業務」である

システムの運用保守などは、一度契約すれば何年間も業務が継続することが多い。いわゆるストック型の業務である。
一方、コンサルティングは少し性質が違う。課題を整理し、現状を分析し、方向性を決め、計画を作る。必要なところまで支援したら、あとは顧客自身に引き取ってもらう。

もちろん、何年にもわたってコンサルティングを継続するケースもある。しかし、基本的には短期間で一定の成果を出し、その後は顧客自身で進めてもらうことも多い。つまり、コンサルティングは基本的に「フロー型」の仕事なのである。これは、コンサルタントにとっては結構大変なことである。

コンサルタントには「来年の仕事」が必要になる

コンサルティングファームに所属していると、マネージャーなどには当然、高い売上目標が設定される。今年の案件をしっかりやるだけでは足りない。来年の案件も獲得しなければならない。継続性の高い案件が多ければ、ある程度は計算ができる。しかし、コンサルティングは案件が終われば、その先の売上はなくなる。

新しい顧客を探せばいいだけでは、と思う方もいるだろう。理屈ではその通りだが、そんなに簡単に顧客が見つかるわけではない。顧客にも当たり外れがあるし、案件によって規模も違う。忙しい時期と暇な時期もある。このように考えると、コンサルティングという仕事は、実はかなり不安定なビジネスなのである。

残念なシステムコンサルタントが生まれる

このような環境の中で、残念なシステムコンサルタントがやってしまうことがある。それは、「今やっているコンサルティングの中に、来年の自分の仕事を仕込んでしまう」ことである。
もちろん、顧客にとって本当に必要なことなら問題はない。今年の検討結果から、来年度に新しい取り組みが必要になることも当然ある。しかし、中には、顧客にとって必要だからではなく、自分たちの来年度の仕事につなげるために、次のテーマを提案の中に入れ込んでくるケースがある。

以前、目にした残念なシステムコンサルタント

ある公共団体で、文書管理について検討することになった。きっかけは、とても現実的な問題だった。大量の紙文書があり、しかも文書のサイズも様々である。それらを保管しているキャビネットがあるのだが、近いうちにそのスペースを空けなければならない。

そこで、「この大量の紙をどうするか」「紙がなくてもいつでも文書を簡単に閲覧できるようにできないか」ということが課題になった。顧客は、今後どのように文書管理を進めていけばよいのか、大手コンサルティングファームに相談した。私は顧客側のアドバイザーとして、その検討に参加していた。

大手コンサルファームから出てきた提案

相談を受けたシステムコンサルタントは、文書管理についてかなり詳しかった。公共団体における文書管理のルールについても知識がある。類似する団体での導入コンサルティングの経験もある。文書管理に適したパッケージについても詳しい。
そして、かなり整った計画を提案してきた。来年度に、文書管理システムの要件を整理して仕様書を作成し、文書管理パッケージを選定する。そして再来年度にシステムを導入する、という計画だった。

一見すると、非常によくできた計画である。しかし、私は話を聞いていて、少し違和感を持った。「今、顧客が一番困っていることは何なのだろう?」ということである。顧客が困っていたのは、目の前にある大量の紙だった。近いうちにキャビネットを空けなければならない。ところが、提案の中心は、来年度の仕様書作成、パッケージ選定、そして再来年度のシステム導入である。

では、「今ある紙をどうするのか?」という話はどこにあるのだろう。文書管理システムを導入すれば、将来的には問題が解決するかもしれない。しかし、システムが導入されるのは再来年度である。「近いうちに空けなければならないキャビネットをどうするか、その際、どうやって情報を見れる状態にしておくのか」なのである。

結局、顧客が最初にやったこと

最終的に、この顧客はその提案をそのまま受け入れなかった。私もアドバイザーとして、まず目の前の問題を解決することを助言した。やったことは、意外とシンプルだった。
まず、不要な文書を整理して捨てる。次に、電子化する文書についてルールを決める。そして、各部署が自分たちで整理する。結果として、文書管理システムを導入する前に、キャビネットをかなり減らすことができた。

もちろん、将来的にシステムが必要になる可能性はある。しかし、それは「今すぐシステムを導入する」という話とは別である。顧客にとって必要だったのは、まず目の前の問題を解決することだった。

「離れがたい関係」を作るのではなく、「離れても大丈夫な関係」を作る

ジャングリアを企画・推進している森岡毅氏の著書「心に折れない刀を持て」の中に、コンサルティング業界について、『クライアントと「離れがたい関係」を仕込もうとすることが課題だ』という趣旨の記述がある。この言葉を読んだとき、私は非常に納得した。同じようなことを考えている方がいるのだなと思ったものだ。

システムコンサルタントとしては、顧客との関係が続けば嬉しい。しかし、本来のコンサルティングとは、顧客がコンサルタントなしでも前に進める状態を作ることでもある。
だから私は、「来年も私たちに仕事をください」というコンサルティングではなく、「来年は私たちがいなくても、ここまで進められるようにしましょう」というコンサルティングをしたいと思っている。

もちろん、そうして顧客が自分たちで仕事を進められるようになった後、新たな課題が出てくることもある。そのときに、改めて声をかけてもらえればいい。システムコンサルタントが自分のために仕事を作るのではない。顧客の潜在的な課題が、新しい仕事を生むのだ。私は、システムコンサルタントとして、この順番だけは間違えないようにしたいと思っている。