官公庁のシステム調達には、多くのプロジェクトで「工程管理支援業務」がある。
名称は省庁によって異なり、「PMO支援」「PJMO支援」「プロジェクト管理支援」など様々だが、その本質は同じである。発注者の立場で、システム開発プロジェクト全体を俯瞰し、計画から完了まで円滑に運営できるよう支援する仕事である。
近年では、デジタル庁をはじめ、厚生労働省、経済産業省など多くの官公庁で発注されており、大手コンサルティングファームが中心となって受注しているように見受けられる。
私自身も、国税庁の大規模システム開発における工程管理支援業務をはじめ、多くの工程管理支援業務に携わってきた。その経験から、この仕事は単なる「進捗管理」ではないと考えている。
工程管理支援業務は、大きく二つに分けられる。
一つ目は、プロジェクトマネジメント支援である。
プロジェクト全体の実施計画の策定、進捗・課題・品質・リスク管理、会議運営や関係者間のコミュニケーション支援など、プロジェクトを安定的に運営するための活動が中心となる
二つ目は、発注者側の開発支援である。
成果物レビュー、ユーザー受入テスト(UAT)の支援、業務移行支援など、発注者が適切な意思決定を行えるよう技術面・業務面から支援する役割を担う。
このような工程管理支援が求められる理由は明確である。
官公庁では、システム開発を専門とする職員が十分に配置されているとは限らない。また、通常業務を抱えながらプロジェクト管理を行わなければならないケースも多い。そのため、プロジェクトマネジメントや工程管理の専門家が第三者的な立場でプロジェクト全体を管理することで、プロジェクト成功の可能性を高めることができるのである。
しかし最近、少し気になることがある。
それは、システム開発の実務経験がほとんどないまま工程管理支援業務を担当するコンサルタントが増えているように感じることである。
もちろん、開発経験がなければ工程管理支援業務ができないということはない。しかし、難易度の高いプロジェクトになればなるほど、現場を理解していることが判断の質を大きく左右すると私は考えている。
工程管理支援業務に求められる能力は数多くあるが、特に重要なのは次の三つである。
一つ目は、プロジェクト全体を俯瞰して最適な判断を下せることである。
工程管理支援は発注者側の立場で業務を行う。しかし、発注者だけを見ていればよいわけではない。受注者であるSIerの状況や制約も理解し、双方の事情を踏まえながら、プロジェクト全体として最善の着地点を導くことが求められる。
二つ目は、多層的な情報を収集し、真実を見極めることである。
経営層、プロジェクトマネージャー、担当者、利用部門、さらには受注者側の管理者や開発担当者まで、様々な立場から情報を集めることで初めて、プロジェクトの本当の姿が見えてくる。一方向の情報だけでは、正しい判断は難しいと考える。
三つ目は、「アメとムチ」を適切に使い分けることである。
契約やルールに基づいて厳格に管理することはもちろん重要である。しかし、それだけでは受注者は萎縮し、本当に困っていることや都合の悪い情報が上がってこなくなる恐れがある。
工程管理の目的は、相手を責めることではなく、プロジェクトを成功に導くことである。
そのためには、できていることは素直に評価し、できていないことについては「なぜできないのか」を一緒に考え、解決策を見つける姿勢が欠かせない。
工程管理支援業務とは、進捗表を更新する仕事ではない。
発注者、受注者、利用部門など、多くの関係者をつなぎ、それぞれの立場を理解しながら、プロジェクトを成功へ導くための舵取り役である。
AIが進化しても、このような総合的な判断力や人と人との調整力は簡単に代替できるものではない。
だからこそ、工程管理支援業務という仕事は、これからもシステムコンサルタントに求められる重要な役割であり続けるのではないだろうか。








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